©SEIZO WATASE/APPLE FARM INC.
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4711 Portugal Special Story 目をつむる。香る。あの人を見つけた。

音と香りの記憶

 コミックの舞台は港町だ。僕は港町を舞台にしたコミックやイラストが多い。海や水平線、雲、船やヨットを描くのが好きだ。どうやら僕が神戸という港町で生まれたせいかもしれない。

 さらに時を遡ると、僕の父が北九州小倉という港町で生まれ、母が北海道室蘭という港町で生まれた、その南北の2人が出会ったのが、神戸という港町という話だ。港町でのロマンスのストーリーが多いのはこの2人の所為だ。

 生前母は神戸時代の話をウキウキと楽しいアルバムを開くように話してくれた。「トーアロードをよく2人で歩いていたわ」と母。2人が腕を組んで歩いた、オシャレな坂道、旧居留区と山手通りを南北に結ぶ約1㎞の坂道だ。後年僕が1人で歩いた時には、トーアロードの坂道からはクッキーを焼く甘い匂いや、ガーデニングのフローラルな香りがして来た。

 僕は小学生の頃、2年間神戸六甲の叔母の家から通学したことがあった。叔母の家の2階からは、神戸港がパノラマのように一望出来た。時折白い海の貴婦人〈クイーン・エリザベス号〉が停泊していた。

 その頃の香りの記憶は、叔母の家の生活の匂いだ。朝の紅茶の香りと七三に髪を分けた叔父のポマードの匂いだ。

 あと音の記憶がある。叔母の家で夜寝てると、操車場の蒸気機関車の金切り声のような汽笛と、重低音で遠くから聞こえてくる船の汽笛や霧笛だった。港町の人生を巡った僕は今、東京港に1・25㎞の高台で絵を描いている。ビルが林立して、海が見えないが、時折風に乗って磯の香りがしてくる。そして夜、あの重低音の汽笛が聞こえてくる。

〈ボーッ〉

僕の記憶の扉がゆっくり開く。

わたせせいぞう
わたせせいぞう 作家1945年神戸市生まれ、北九州市小倉育ち。早稲田大学法学部卒業後、サラリーマン生活を送りながら漫画の製作を始める。1974年「ビッグコミック」の第13回ビッグコミック賞入選を皮切りに1983年より代表作「ハートカクテル」、日本の美しい風景の中で暮らす夫婦の愛の物語「菜」など、大人のラブストーリーを描き続けている。また、官公庁広報用ポスターおよび企業用イラストを数多く製作し、イラストレーターとしても国内外において展覧会を開催し好評を博している。現在、季節ぴあの表紙イラスト、ファッション誌「メンズプレシャス(web)」にて「ワンダーカクテル」を連載中。新刊「あの頃ボクらは若かった」(毎日新聞出版)8/31より発売中。 公式サイト: APPLE FARM

Products

4711ポーチュガル/オーデコロン

地中海の強い日差しをイメージさせる4711ポーチュガル。
スイートオレンジ&レモンのフレッシュな香りから、
コリアンダー&アーモイズのスパイシーな香りに変化。
最後はエボニー・ムスク・モスといった大人らしい深みのある
ウッディ&アンバーな香りを楽しめます。