特集 4711 ポーチュガル イメージモデル 木村東吉

いい香りのする大人は、過去も、未来も、語らない。

そこには、かつてモデルで活躍していた格好良い姿だけではなかった。自分の生き方を見つけてブレずに今も走り続ける。覚悟を決めた大人の姿があった。

香りは、人生の深いところをくすぐる。

木村氏が4711ポーチュガルを初めて手にしたのは、モデル時代全盛の頃だった。知り合いのブランドショップのオーナーがつけていたのがきっかけだという。柑橘系の爽やかな香り、海をイメージするブルーラベルのボトル。どれもが木村氏を惹きつけたが、やはり尊敬できる、そのオーナーの憧れからつけ始めたのが正しいだろう。人は、好きになる人、憧れる人を真似たがる。そこから、自分に合うものを見つけたり、自分らしさをつくっていくのだ。モデルで活躍しながら、現在は河口湖を拠点として、アウトドアやアドベンチャーレース、マラソン活動を行う今の木村氏をつくった香りとは何なのだろう。そう訊くと、マウンテンパーカーから香った焚き火の匂い、アメリカンダイナーの朝の香り、標高2,000〜2,700mの世界各国の山々の共通の香り。そんな香りの思い出が今の自分を形成したという。それほど、人間の五感にある嗅覚は、人間が生きていく上で深い関係があるということだ。

大人も子どもも、今が大切だ。

「今時の若者は」、「昔は良かった」。大人がよく使う言葉だ。しかし木村氏は、そんな大人が一番かっこ悪いと言う。なぜなら、今何を見て、今何を大切にして、今何をしたいか。それにどれだけ打ち込んでいるかが大切だからである。確かに昔のことばかり言う大人は聞いている方も嫌になる。そんな人から

は決していい香りはしない。話をつけ加えると木村氏は、こうも言った。「いくつになったらこれをしたいとか言う、未来を語る大人も嫌いなんです。大人だったら今やれと」。確かに未来を語るのは、若者の特権だ。大人なら今を一生懸命生きろ。そういうことだろう。

自分の弱さを知っている人は大人だ。

レイモンド・チャンドラーの小説の探偵フィリップ・マロウのセリフの中で「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」というセリフがある。木村氏は、この言葉が大人の定義みたいなものではないかと語る。確かに人に対して優しくできる人は強い。自分が強くならないと人に優しくできないからだ。思いやりがない人ほど自分に自信がなく、不安や怒りなど、ネガティブな感情が出てくる。ただ木村氏はこうも言う。「みんな強くなりたいんだけど、

人は基本的に弱い。誰だって弱さを持っている。だけど本当に強い人は、その弱さを知っている人。弱さをわかっている人だ」と。アウトドアでも危険なことをわかっている人は無理をしない。仲間にいいところを見せようと無茶をする人は必ず失敗するらしい。弱さを知ることこそ、強さにつながる。これは人というものを組織とか地位とかで見ないアウトドア独自の視点だと思う。地位に胡座をかかず、いつどこでも一人の人間として生きてる人は、本物の大人の香りがする。この木村氏のように。

<プロフィール>

木村 東吉(きむら・とうきち)

1958年生まれ。20代はポパイ、MEN'S CLUBなどの雑誌の顔として活躍。30代からは河口湖を拠点としてアウトドア系の執筆、キャンプ教室の指導、アドベンチャーレースのコースディレクターなどを務める。2013年春から西湖の北岸に位置する「キャンプビレッジ・ノーム」のプロデュース管理を行う。